コナツとジステンパーの闘い 


コナツの命をあっけなく奪ってしまった、犬の伝染病でもある『ジステンパー』。
ここでは日記形式を中心に、その短かかった闘病を綴ろうと思います。

2月28日
 いつもと変わらないコナツのお風呂。少し痩せたかな?と思う。それ以外に異常はなかった。
もしかしたら食欲も少し落ちていたかも。洗った後はいつものように、部屋を駆けずり回って、生乾きのまま寝袋に入って寝ていた。

3月4日
 ここ数日、コナツが姿をあまり見せなくなり(寝袋に入ったまま寝てばかり)、餌もあまり減らないので、無理矢理引っ張りだしてみたら、がりがりに痩せていた。今朝は、私達が食事している時に、一度ゲージをばりばり引っ掻いていたのに。部屋を歩かせても、ふらふらして座り込んでしまったり、ぼーっと宙を見つめたままだたりする。
 前にも一度そういうことがあって、その時は水に少量のプロポリスを混ぜたら、しばらくして回復したので、今回も、と思ったけど、水すら飲まない。無理矢理、スプーンで飲ませたら、吐きそうだった。毛もぼさぼさ。

3月5日
 朝方、一度起きてコナツを見に行ったら、具合は良くなさそうだけど、息はしていたので安心した。
それでも昼間、ゲージの掃除をする時に、ソファの下の収納スペースに潜り込む元気はあったみたいなんだけど。フェレットの本にあった通り、スポーツドリンクにプロポリスを混ぜて、スプーンで飲ませること数回。夜になって、ふらふらと出て来たので、夫がフェレット用のおやつを砕いてやったら食べた。
 おやつのついでに餌もばりばり食べ、水も飲んだので、私達はそれで安心してしまった。

3月6日
 やはり餌は食べてくれない。

3月7日 入院。
 やっぱりこのままじゃダメだということで、ネットで調べたフェレットを扱ってくれる動物病院へ。
ほかに2軒、近いと言える距離にあって、そちらは評判もよろしかったのだけど、歩いて行けるほうがいいだろうと言うことで決めた世田谷のSという動物病院。
  まず受付の女の子が詳しく症状を聞いてくれるのはいいけど、「どこでここを知りましたか?」とか「前の病院はどちら?」とか、ちょっとなんだかなあということまで。そういうのは診察の時にちらっと聞くようなことじゃないのかなあ。カルテにばっちりそういう欄があるなんて、なんだかなあ。

 病院自体、ちょっと古臭い感じ。三宅島の動物たちへの寄付金とか、これ見よがしに万札やら5千円札やら入ってるんだけど・・・。病院にいたのは、院長らしき人と若い長髪のお兄さんのお医者さん、受付のちょっと横柄な女の子、奥でトリミングをしている女の子、の4人。
 さて診察、となると、私達は待ち合い室で待たされた。こういうのは初めてだったのでびっくり。ま、そういう所もあるのかな、と待っていたんだけど、検便、レントゲンなど一通りやってみて、検査も兼ねて入院ということに。まずショックだったのが、院長の「このままだと死ぬことだけは確実です」の一言。その割に自分は診察室でタバコをスパスパやってたけど。診察室には療養中らしい小鳥たちが、プラスチックのケースには入っていたけれど、そこにいるにも関わらず。
「普通のフェレットなら診察室に入ったら興奮して暴れるんですけどね」と言うけれど、コナツは前の病院でも大人しい子だと言われたので、病気じゃなくてもそれはどうかな、と思う。だって普段のコナツの様子を聞きもしないうちにそんなこと決めつけるんだもん。本当にフェレットのことに詳しいのか?と思いつつ、なにか釈然としないものを感じながらも、そこまで重体では任せるしかないので、検査の結果を6時に電話して聞くということで、内金になけなしの1万円を払って帰って来た。

 6時になって電話をすると、院長が「喉が炎症を起こしていて、ゴエン(ゴイン?)、つまり水や食べ物が気管に間違って入ってしまうため、気管支が炎症を起こしている」と説明してくれた。とりあえず病院にいたら点滴もしてくれるから安心かなと思うけど、金銭的な面でも不安は拭えず。明日電話することにしたけれど・・・。

3月8日 入院二日目。
 昼過ぎに病院に電話して様子を聞くと、若い医師が出て、相変わらずの容態だと言う。面会の予約を入れ、仕事に出ていた夫と近くの駅で待ち合わせて病院に。コナツはぐったりとしたままで、鼻の前に手をかざして匂いをかがせても、あまり反応はなかった。水入れに赤い色の水、餌入れに多分ふやかしたペットフードが2粒手付かずのまま。そしてなぜか青い菜っ葉の類いが・・・。上のゲージにはリスザルがいたんだけど、夫によると同じような食べ物だったらしい。
 病院でしてくれている治療は、点滴、強制的に水を飲ませたり、よだれが喉に詰まるらしいので、それを拭き取ってくれているらしい。フェレットがそばに入院していた。見た目には普通の元気な子なので、最初は預かっているだけなのかと思ったけど、低血糖で入院して、回復したところらしい。

 気になる入院費用のことを聞くと、明日までに出しておきますとのこと。ネットのフェレット掲示板で相場を聞いたところ、だいたい¥8000くらいはかかるみたいなので、覚悟はしているけれど・・・。

 病院に行く途中、家に電話してコナツのこととか喋ったので、夜、また母親から電話があって、コナツのことで喧嘩になる。うちだって何十万も借金してまで延命治療に払うつもりはないし、コナツだってまだ入院したばっかりで、回復しないわけじゃないのに・・・。コナツは私の連れ子のようなものだから、それが原因で夫婦がモメてはいけないと心配しているのもわかるけど。

3月9日 入院三日目。
 私の体調が悪いので、容態は電話で聞くだけに。依然、容態は変わらないらしい。

3月10日 退院させることに。
 午後、コナツの見舞いに。実は昨日の夜から、退院させることも相談していた。なんとなく今の病院に対する不信感があるし、転院も考えながら、または医者が許せば、通院に切り替えることも相談しようと思っていたのだけれど。
 コナツの容態はというと、相変わらずタオルにくるまって寝ていて、若い医師によると、全く回復の兆しを見せていないとのことだけど、夫が触ったら、目を覚まして手をよじ登ろうとしていた。それでも医者は通院はまだ危険で考えられないと言うし、とりあえず月曜日まで様子を見ようということで一旦は帰って来たけど・・・。

 でも帰り道、どうしても納得がいかない私。夫が費用のことで正直な現状、というか、あまり何十万もかけられないことを思い切って医者に言ったのに、なんの反応も起こさなかった。ネットで調べたほかの病院とか、知り合いの話とかでは、費用のことも親身になってくれる病院もあるらしいのに。こんな病院を選んでしまったことを後悔していたら、夫が退院させてくれるように電話してくれた。
「もしこのままでも回復しないでダメなのなら、家で看取りたい」ということを伝えたら、向こうは言い返せなかったみたいで。6時半にまた来てくれというので、寒風吹きすさぶ中、また迎えに。

 ピクニック用の内側に布張りされた籐のバスケットの中に、使い捨てカイロと、コナツ愛用の寝袋を入れて行った。院長はそれを見て、「もう袋には入りませんよ」と一言。でも看護婦らしい女の子が連れて来てくれたら、すんなり入った。薬なのか栄養剤なのか説明も無く、2つの液体を処方してくれたけど、「今、退院させたら看取ることになりますよ」と追い討ちの一言。私達はどんな非情に思われても、コナツをここにいさせるより、他の病院に見てもらうことのほうが重要だったので、黙って帰って来た。

 帰り道、コナツはバスケットの蓋の隙間から鼻を出し、様子を伺っていた。家に戻るなり、臭いを嗅ぎまくり、自分の餌を見つけて2粒くらいを固いまま食べる。でもやはりまだ無理なのか苦しそう。でも餌を全く食べなかったらしいから、すごい進歩かもしれない。水を無理矢理飲ませて寝かせたら、夜の11時くらいまで寝て、水を飲ませるために起こしたら、異常に興奮して、しつこく部屋を点検。お湯でふやかしたフードも食べた後、力尽きたのか寝そべったので、ついでに耳掃除させてもらおうと思ったら、片耳掃除しただけで、すたこらさっさと自分のゲージに戻り、寝袋に入って寝てしまった。ほんとに具合が悪いのか、演技なのかわからないので、混乱してしまう。具合が悪いことは確かなのだけど。しばらく寝かせてから、私達が寝る時は大きめのキャリーケースに寝袋を移して寝かせた。

3月11日
 今日は朝7時に寝室で一緒に寝ているコナツが目を覚ましたので、夫が餌をやってくれた。ふやかしたフードを少し食べて、また眠る。今度は4時間後くらいに目を覚まし、水をひと舐め。食欲が湧くかなあと鶏肉を茹でたのや、バナナを与えてみるけど、どれも一口くらいしか食べてくれない。夜寝る前にスポーツドリンクにプロポリスをいれたものを、結構多めに飲んでくれたけど・・・。

3月12日 新しい病院へ。
 朝方からコナツがイビキみたいな音をたてて寝ている。もともとイビキをかく子だったけど。起きたので、トイレに行かせたけど、何滴、という単位しか出ないみたいで。水も飲んでくれず、ぐったりしているので、正直、覚悟しながら、新しい病院へ連れて行ってみた。ここがまた清潔で明るい雰囲気の病院で、こないだのところと大違い。テレビの特番で紹介されたこともあるらしいし、患者がひっきりなしにやってくるし(犬猫中心だけど)。受付の女性も感じがいいし、飼い主ごと診察室に入れてくれた。(これは当たり前のことなんだと思うけど)

 実は前に入院していたことを話すと、それを中心に問診。病院を変わったから、また一通りの検査を覚悟してたんだけど、前の病院の診断を信じるのを前提に、ジステンパーが疑われることから、爪を切って、血液検査だけしてもらった。赤血球が増えているけど、これは脱水のせい。先生もジステンパーを疑っいていたけれど、ワクチンが切れて1ヶ月だし、感染経路も考えられないことから、まだ判断できないみたい。私も内心そうじゃないかと疑ったこともあったので、すごく安心した。しかもここでは『死』に関する言葉は一言も出なかったし。もちろんジステンパーが死に至る病気だということは説明を受けたけど。

 結局、病名も気管支炎ではないのかも。点滴を受け、水を飲ませる注射器をもらって、しばらくは通院で様子を見ることに。もしかしたら、最初の病院でかかった費用は無駄なのかもしれないね、と夫と話しながら帰ってきた。

3月13日 通院二日目。
 動物病院が午前中が空いているらしいので、朝早く起きて行こうと思ったのだけれど、なぜだか何度も目が覚めるのに、身体が起きてくれなくて。夫が一人で連れて行ってくれた。風邪が強かったので、コナツのバスケットが何度も飛ばされそうになったとか。夜中にもコナツのおしっこさせてくれたし、本当に私一人だったら、できないこともたくさんあったと思うけど・・・。働かなくちゃいけないし、看病もできなかったかもしれない。

 コナツは病院で注射の準備をし始めると暴れるらしい。でも家に戻ると相変わらず死んだように寝てばかり。でも夜に少しだけ水を飲んでくれて(注射器で口に入れたら)、ふやかしフードも少しだけ食べてくれた。餌を口に近付けると、パカーと口を開けて食べようとしてくれるので、これだけがちょっと救いかも。

3月14日 ぽかぽか陽気。
 今日はあったかくて、徒歩30分の通院も苦じゃなかった。
 水曜日はエキゾチックアニマルが好きで専門にしている先生がいるみたいで、看てくれた。若いけど経験豊富な感じで、なによりフェレットに対して愛情があるのも好感があった。しかもご本人も飼っているらしい。
 でも、やはり診断はジステンパーかも・・・ということだった。稀に、ワクチンを打っていても効かない子がいるのだとか。それも残り数%という確率で。コナツはそうかもしれないと言われた。もしかしたらインフルエンザの可能性があるらしいけど、でもやはりパット(肉球)の角質化がジステンパーの症状の一つらしく・・・。
 病院の正面はガラス張りで、犬の美容室になってるんだけど、そこで綺麗な犬を見ていたら、なんだか少し辛かった。注射を変えてもらい、犬用だけどフェレットも好むという流動食の缶詰を出してもらう。内服薬も出してもらったけど、水も餌もほとんど拒んでいるコナツが飲んでくれるかどうか・・・。1包¥500もするんだけど。
 毎日、病院へ行って、コナツの様子を伺っている毎日の唯一の救いは、オークションがぼちぼち売れていることかなぁ。治療費には全然およばないけど・・・何かしてるっていうのが、ちょっと気晴らしになってるかも。

3月15日 少し回復?
 今日起こしてみて、調子がいいようなら、今日の病院はお休みにしようということにしていた。注射や点滴もフェレットにはストレスになるらしく、人間の病気でもそうであるように、ストレスが大敵らしい。水を全く受け付けないのなら点滴はやむを得ないけど、昨日もらった缶詰に対しても反応がよく、少し食べてくれたし、薬を混ぜた水も少しづつだけど飲めるようになったので、今日はやはり病院はお休みにした。主治医の院長先生もお休みのことだし。
 今日の夕方なんかは仰向けに寝ていたくらいだし、水を飲んだ後の苦しそうな様子も少なくなって来たし、少しは回復してくれたのかも。フェレットサイトの掲示板の情報によると、ジステンパーと診断されても誤診だったコもいるそう。初期なら薬の投与で治った症例もあるらしく、少し希望が見えて来たかも。

3月16日
 今日のコナツは、夕方、私達が夕食の買い出しに行く時もよく寝ていたので、ホットカーペットの上に寝袋をおいて少し家を空けた。中古ゲーム屋→本屋→スーパー→薬局→酒屋とはしごをして帰って来る時、「もしかしていない(どこかに隠れてる)かも」とか言いながら、寝かせてある部屋のふすまを開けたら、一瞬寝袋が膨らんでいたので「奥で寝てるんだな」と思ったのに、近寄ってみれば実はカラッポ。ヤバいと思いつつ探したら、物の陰で寝ていた。誰もいなくなって寂しくなって探し回ったのかな?その後も興奮は治まらず、しばらくそこらへんを探検して回ってました。元気なのね・・・そういう時だけ。

3月17日 雨。
 午後、夫がコナツを病院に連れて行ってくれた。体重が減って、体温も低かったみたいで。昨日あんなに歩き回ってたのに?お医者さんは歩き回らせた方がいいと言うのだけれど、必ず次の日は具合が悪くなるんだもん。今日は点滴に抗生物質とインターフェロンをブレンドして打たれたみたい。水分と餌を無理矢理たくさん採らせようとしたら、その後で畳でおしっこを漏らしてくれました・・・絶対わざとだ!!

3月18日 こんな日が続くといいのに。
 コナツの容態も落ち着いているので、今日は久しぶりに二人そろって下北へ出かけた。心配だったけど、トイレにうんこもしてあったので、安心した。

3月19日 急な別れ。
 今日、病院に行くかどうか迷いながら過ごしていた。正直、本当にジステンパーだったら、延命治療になってしまうと思っていたので、そうやってコナツの寿命を無理に延ばすのは人間のエゴじゃないかと迷ったり、でもがんばって餌を食べようと口を開けているコナツの命を私が奪えるはずもなく・・・これは長期戦になると思って覚悟し始めていた。

 夕方6時くらい、私が夕食の支度をしていると、コナツがどこかに行きたそうにしていたので、夫がだっこして、大好きなお風呂を見せてやったりしてくれていたんだけど、おしっこをもらした何分か後、急に目を見開き、口も大きく開けて喘ぎ始めて・・・唇が紫色になり、このまま死んでしまうのではと思って、必死で身体をマッサージしたら、戻って来てくれた。
 夫が自転車で連れて行ってくれて、私は走って病院へ。あんなに走ったことなんて、ここ何年もない。病院へ着いたら診察は終わっていた。処置はなにもされなかったらしい。やはりジステンパーらしく、去年の10月に預かってもらったところで、運悪く感染してしまったのじゃないかと。ワクチンが効くコだったら問題なかったと思うけど・・・。時々震えているのは寒さのせいじゃなく、もうウイルスが脳を侵していたみたい。今夜がヤマだろうということで、自宅で看取るために連れて帰った。
 そして夜10時くらいからまた容態が悪化し、何度も逝きかけながら、戻って来るという状態が続いて、でも日付けが変わってしばらくして、本当に息をつく感じで逝ってしまった。最後は本当に苦しそうだったから、楽になれてよかったとは思うけど・・・でも様子がおかしいと気付いてから20日。こんなにすぐにお別れしなくちゃいけないなんて。

 今日一日を思い返すと、なんだかコナツが私達を見納めようとしていたとしか思えないほど、目を閉じることが少なかった。ゲージに寝かせても寝袋からすぐに首を出すし、そのうち出て来ようとするのだけど、ゲージから部屋へ乗り越えることができなくて・・・。私がMacに向かっている間ももぞもぞとするので、ジャージの前を開けて胸元にいれてやると、大人しくしていたんだけど。夫がだっこして部屋を見せている時も、彼の顔をじっと見上げているし、なんだか変だった。
 発作を起こしてからも、目が乾くから目を閉じさせようとするんだけど、時々昏睡するのか目が裏返りそうになってもまだ閉じなくて・・・。 そのまま眠りそうだったので「ご飯の支度して来ていい?」と声をかけると、急に目がぐるぐる動いて、身体を動かそうとするし。

 そんな時、インコたちはすごく大人しくて、コナツが逝ってしまった後、だっこして見せてあげたら、すごく神妙な顔をして見ていた。ヒナちゃんの方は、危篤状態の時からずーっとコナツを見下ろしていた気がするし。
 こんな小さな身体(最後に計ったら760グラムくらいだった)なのに、私の心の中を大きく占めていたなんて。

3月20日 
 コナツの隣で3時間ほど寝たら、7時半にぱっちりと目が覚めた。ゴミの日だったから、コナツが起こしてくれたのかな?なんて。しばらくして夫が起きて来て、花を買って来てコナツの遺体のそばに活けてくれた。買って来てもらう時になにも注文をつけなかったんだけど、内心「コナツにはスイートピーが似合うかな」と思っていたら、ちゃんと買って来てくれた。まぁ、季節だけれど。
 逝ってしまってからしばらく抱いていた亡骸はまだ温かかったのに、当たり前だけど冷たく、硬くなっていた。昨日までは温かく、柔らかな身体だったのに。そこにいた魂はどこに行ってしまうのだろう。

 夕方、コナツともっとも親しい私達の友人の方が、大きな桜の枝も混じった花束を持って駆け付けてくれた。コナツの容態も逐一、メールしたりしていたので、随分心配もおかけしたんだけど・・・。なにも思い付かない状態の私達に、お線香とお香を立てる壷まで買って来て下さって、葬儀をしてくれる所も教えてもらったので、電話してみた。何社か電話して価格を比較したほうがいいよ、と言われたのだけど、コナツのかかっていた病院に紹介された所にまずかけたら話し中で、次の会社にかけたら繋がったので、受付のおばちゃんの話術もあってか、予約を入れていた。コナツが危篤の状態から、なんとなくコナツの思っていることがわかる気がしたりしていたので、神憑かり的だけど、なんとなくそこがいいだろうと思ったから。

 コナツをよく知る方と思い出を話したりしているうちに、私も段々コナツの死を受け入ることができるようになっていたような気がする。私は飼っている動物の死に慣れている、というか、ペットロスの状態ほどには陥らないだろうと思っていたのだけれど、やっぱり冷たくなったコナツの身体を撫でると、どうしようもなく寂しくて。 一人で暮らしていた時の、私の色んな状態を見守っていてくれたのだと思うと、なんだか私の過去までが消えてしまったような気がして。

 夜になると途方もなく寂しくてまた泣いてしまったけれど、よく昔母に言われたように、あまりずっと泣いているとコナツもこの部屋から離れられないだろうし。結局泣くのって自分のためだものね。コナツを思うのなら泣かないほうがいいんだよね。
 期せずして、というのか、コナツが亡くなったのは折しもお彼岸入りして間近。危篤のコナツは一人で逝くのをすごく寂しがっていた気がしたけど、きっと今はいろんな魂が帰って来ている時だから、寂しくないよね。きっと。

3月21日 小さなお葬式。
 昨日私が段ボールに白地に淡い天使の絵柄の入った紙を貼って作った棺にコナツを入れ、遺体の回りに、飾っていた花を並べた。スイートピーを並べながら、この花を見る度にコナツを、そしてこの日のことを思い出すのかなと考えていた。昨日いただいた桜の枝を小さく折って、コナツの両手に持たせて、寝袋、オヤツ、私が昔作ったクマのぬいぐるみなどを入れる。そして、私達の写真も。

 朝10時半過ぎに葬儀社からお迎えが来た。棺代わりの箱の蓋を閉める時、取りすがって泣くのかな、とか想像していたけれど、昨日じっくりお別れできたせいで、少し泣きそうになっただけで済んだ。亡骸にコナツの魂はもうないということがわかっていたし。葬儀社のおじさんは、非常に丁寧な人だった。

 夕方5時過ぎ、お骨を持って来てくれた。早速お骨を見たいと思うのだけれど、袋が壷とぴったりのサイズなので、出すのに苦労した。逆さにするのは抵抗があったんだけど、仕方なく斜めにしたら、切ないカラカラという音が・・・。やっと壷を出して開けて見る。想像していたのは、真っ白なラムネみたいな骨だったんだけど、実際は少しオレンジ色がかった、脆くて薄い(あるいは細い)骨だった。もしかしたらお花の色素が移ったのかな。
 本当なら骨なんて、触るのなんてちょっと恐ろしいと思うけれど、コナツの骨だから、愛おしいほどで、焼け残ったわずかな骨を一つずつ確かめた。頭蓋骨の上顎を裏返した時、薬を無理矢理飲ませた時を思い起こさせるんだよね・・・。 切なかったけれど涙は出なかった。夫がその時、「やっと終わった感じだな」と言ったけれど、ほんとに終わったな、という感じ。コナツはこの時、ほんとうに仏様になった。

 こうやって、日記を読み返してみると、本当にどうしてこの時点で病院に連れていかなかったのか、とか、こんな呑気なことを言って、とか後悔もしたりするけれど、この時期は本当に私達の経済状態も厳しい時で、実際、この時期にコナツの治療費を借りたお金を未だに返していたりして。それに最後の最後まで、コナツが死ぬとは信じていなかったし、病気も一進一退を繰り返していたので、まあ仕方ないのかな、と思うのだけれど。ただ救われるのは、私達の手元から旅立たせてあげられたこと。私が仕事をしていれば、治療にお金がかけられたかもしれない。でも、どうしても寂しい思いをさせたかもしれないと思うと、これでよかったのかな、とも思う。
 コナツの看病をしている時に、ずっと話を聞いて下さった方にも言われたことだけれど、お金は後でいくらでも埋め合わせられるけれど、もしコナツに充分なことをしてやれなかったら、後で取り戻すことはできないのだから・・・。